【左川ちか詩集 (岩波文庫)】左川ちか(著)

型番 cbbs381
販売価格 792円(内税)
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左川ちか(1911-36)は昭和初期のモダニズムを駆け抜けた女性詩人。日本近代詩の隠された奇蹟とされた。「緑」「植物」「太陽」「海」から喚起する奔放自在なイメージ、「生」「性」「死」をめぐる意識は、清新で全く独自の詩として結実した。爽快な言葉のキーセンテンスは、読む者を捉えて離さない。初の文庫化。

【内容】
ありきたりのモダニズム詩ではない。それはとりわけ、記号としてではなく、不気味なものとして露呈する身体や生命の表象についていえる。たとえば「神秘」という詩篇だ。無意識の欲望がほとばしり出るように、「カアテンを引くと濃い液体が水のやうにほとばしりでる。/あ、また男らは眩暈する」という詩行。体験ではなく無意識に切り込む直観が、詩にエロティシズムをもたらしている。エロティシズムは死と背中合わせである。それでいて「ゴルフリンクでは黄金のデリシアスがころがる」と始まる詩にモダンな浮力があり、速度があり、回転がある。詩人が生きた時代には誰もが縛られていただろう異性愛の重さと停滞、束縛を逸脱するしのび笑いが洩れる。男たちの「眩暈」への言及は、不敵ですらある。(川崎賢子「解説」より)
神秘
ゴルフリンクでは黄金のデリシアスがころがる。地殻に触れることを避けてゐる如く、彼らは旋回しつつ飛び込む。空間は彼らの方向へ駈け出し、或は風は群になつて騒ぐ。切断面の青。浮びあがる葉脈のやうな手。かつて夢は夜の周囲をまはつてゐたやうに、人々の希望は土壌となつて道ばたにつみあげられるだらう。影は乱れ、草は乾く。蝶は二枚の花びらである。朝に向つて咲き、空白の地上を埋めてゆく。私らは一日のためにどんな予測もゆるされない。樹木はさうであるやうに。そして空はすべての窓飾であつた。カアテンを引くと濃い液体が水のやうにほとばしりでる。
あ、また男らは眩暈する。

【著者について】
左川ちか(1911-1936) 昭和初期の詩人。北海道余市町に生まれる。小樽高等女学校(現・小樽桜陽高校)卒。1928年、上京。雑誌に詩を発表、注目を集めたが、1936年、胃がんを発症し入院。翌年死去。享年24。没後、伊藤整、百田宗治らにより、『左川ちか詩集』(昭森社、1936年11月)刊行。生前、萩原朔太郎、春山行夫、北園克衛らから高く評価された。戦後も、吉岡実、富岡多惠子らに影響を与えた。

川崎賢子 1956年生。文芸評論家。東京女子大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。清華大学日本研究センター客員研究員。著書に『彼等の昭和 長谷川海太郎・潾二郎・濬・四郎』(白水社、1994)『宝塚 変容を続ける「日本モダニズム」』(岩波現代文庫、2022)『宝塚というユートピア』(岩波新書、2005)『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店、2010)『もう一人の彼女:李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ』(同、2019)など。編著に『久生十蘭短篇選』(岩波文庫、2009)尾崎翠『第七官界彷徨・琉璃玉の耳輪他四編』(同、2014)など。

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著者 : 左川ちか
出版社 : 岩波書店 (2023/9/15)
版型 : 文庫判
頁数 : 236ページ
サイズ : 14.8 x 10.5 x 0.97cm
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